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女性ホルモンと認知症の深い関係

2014.05.11

女性なら誰もが迎える更年期。女性ホルモン・エストロゲンの急激な減少により、五十肩や自律神経失調症、皮膚や肌のトラブルなど、さまざまな悩みを抱えることとなります。それだけではありません。ぼうっとしたり、落ち込んだり、物忘れが起こったり。「ひょっとして痴呆かしら?」と思われるような症状も……。いったいどうして、更年期にこんな症状が起こるのでしょうか?

■エストロゲンが多いとアルツハイマー病にならない?

 アメリカで行われた調査によって、エストロゲンがアルツハイマー病の改善に効果を発揮することが報告されたのは80年代。アルツハイマー病の女性患者に、6週間エストロゲンを投与した結果、7人中3人で注意力や方向感覚、気分に著しい向上が見られたそう。

 さらに90年代初め、同じくアメリカで疫学的研究がおこなわれ、エストロゲンが持つ、アルツハイマー病の予防効果が確認されました。閉経後に1年以上エストロゲンを投与された女性は、80歳になってもほとんどアルツハイマー病にならない、というのです。日本においても、同様の研究結果が。アルツハイマー病の女性と、そうでない女性のエストロゲンを測定した結果、アルツハイマー病の女性にエストロゲンがより欠乏していることがわかりました。

■エストロゲンが脳に与える効果とは

 このように、女性ホルモン・エストロゲンとアルツハイマー病には深い関わりがあるよう。それでは、具体的にエストロゲンは脳にどのような作用を与えるのでしょうか?

 エストロゲンを投与すると脳の血流は10~20%増えることがわかっています。さらに、脳の中枢神経の情報を伝える物質、アセチルコリンの代謝も促されるように。また、中枢神経の働きを支援するグリア細胞も活発化するそう。これらの働きが総合的に脳の機能を助けるのでは、と考えられています。

 とはいえ閉経後のエストロゲン大量投与は、子宮ガン、乳ガン発生のリスクを伴うことがあるため、大規模な調査はしにくいよう。現在も研究は進められていますが、はっきりした結論が出るには至っていません。しかし、エストロゲンの欠乏と、アルツハイマー病の発症になんらかの関わりがあることだけは、どうやら間違いなさそうです。

■ホルモン療法って大丈夫なの?

 「ホルモン治療をするとガンになるんじゃ……?」ホルモン療法に、こんなマイナスイメージを抱く人は少なくないのでは? でも、最近は黄体ホルモンと併せて服用することで、ガンのリスクが激減することがわかっています。ただし、高齢になってからこうした併用をおこなうと、かえってアルツハイマー発症につながるという報告も。もちろん、年齢や症状を考慮しながらおこなえば、ホルモン療法は怖いものではありません。

■うつ病の可能性も疑って

 「更年期の物忘れ=アルツハイマー病の兆候」と決めつけてしまうのは少し早計かもしれません。なぜなら、更年期は「うつ病」にかかりがちな年代でもあるからです。若さや女性らしさを失うことへの不安に加え、子どもが独立し、大きな荷を降ろした空虚感に襲われることもあります。逆に介護などの責任を抱え、重圧感に悩む人も。こうしたもろもろの不安要素がいっぺんにのしかかり、うつ病を発症することが少なくないのです。

 うつ病もアルツハイマー病も、初期症状はよく似ています。ただし、本人はなかなか自覚できないことが多いもの。ミドル世代の女性は「ちょっとした不調くらい、更年期にはよくあるものよ」と、ついつい我慢してしまいがちですが、ここはやはり家族が早めにサインをキャッチして、必要があれば一日も早く専門医を受診するよう、すすめてあげてください

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