東和マッサージ　中野 | 日記 | ストレスは物忘れの原因になるか

基礎知識 　人は「ストレス」という言葉を漫然と使っているが、シンハ博士はそれを「脅威、困難ないし畏怖の念を起こさせる刺激にわれわれが反応するプロセス」と定義する。イェール・ストレス・センターの代表を務めるシンハ博士は「それはコルチゾール、アドレナリン、ペプチド、それにその他のホルモンや化学物質から成る複雑なシステムで、われわれの反応や適応を促進し、体がストレスのない状態に戻るのを手助けする」と話す。 　博士によると、ストレスはスペクトル状になっており、その一端には制御可能なストレスが存在する。これは適切な行動を取れば、自分自身を取り戻せる類のストレスだ。博士は「冷蔵庫がほぼ空っぽになっているのに気付いたが、予報通り吹雪になる前に急げば店に行ける場合などがこれにあたる」と指摘した。もう一端には制御不可能なストレスが存在する。「家を失った」、「大事な人との関係が終わった」といったことがこの部類に入る。この二つのタイプはオーバーラップする場合が多い。 　記憶は痕跡を残す 　シンハ博士によると、脳は制御不可能な脅威を非常に迅速につかみ、同じ強いストレスにさらされたときに関係する情報を迅速に取り出すことができるという。夜1人で道を歩くと、その時のストレス反応（記憶）が、次の機会に1人で歩いている時にあなたに注意喚起して危険だと感じさせる場合がある。同博士によると、「こういった経験は頭を冴（さ）えさせ、印象を記録する」。 　制御可能なストレスも痕跡を残す。試験前に勉強する時間が十分取れなかったといった場合だ。「頭がこの経験を記憶すると、次の試験の前にはもっと長い勉強時間を取れるようになる」という。  　ストレスと記憶との関係 　ただし、研究によると、制御可能なものであれ、制御不可能なものであれ、同時に複数のストレスにさらされると、記憶の呼び出しがうまくいかなくなる場合が多い。それは、「脳の思考のキャパシティーが分割される」（同博士）からだという。  　一般的に、ストレスを受けている人は、目の前のタスクに集中できるものの、取りたてて関係ないことを忘れてしまう可能性がある。会議に遅れて駆け込む人は、どこに鍵を置いたかを忘れる場合がある。また自宅が差し押さえの危機に瀕している人は、自分の電話番号すら思い出せないかもしれない。シンハ博士によれば、「われわれを人間たらしめるものは、創造的かつ感情的に考えることで、そのおかげでわれわれは理性的かつ賢くなれる」が、「同時進行する複数のことを抱えていると、そうしたことは枠外に追いやられ、感情的に圧倒されてしまう」という。 　最近の研究によると、認知症やその他の記憶関連の疾患のリスクは、制御不可能なストレスに遭遇する機会が多ければ多いほど上がる。シンハ博士によると、脳スキャンを使用した研究で、大事な誰かを失ったり、暴力を目撃したりすることが大きな負担となることが判明している。同博士は「研究によると、脳細胞の枝が全体的に縮小し、消滅し始める場合がある」と述べた。そして「これは、例えば離婚すると認知症になるという意味ではないが、リスクはあるということだ」と話した。  　脳は復活する  　朗報は、脳はダイナミックであり、ニューロン損傷は修復できるという点だ。シンハ博士によると、脳の研究でいわゆるニューロン再生が立証されている。ただし現在の科学では、どの類のストレス関連の記憶喪失が修復可能なのかを特定できていないという。   シンハ博士は患者に毎日のストレス制御目標を設定することを勧めている。十分な睡眠と水分を取り、定期的に少量かつ健康的な食事を取って、血糖値の急降下を防ぎ、運動して高いエネルギーを維持するといったことだ。ストレスの兆候に注意することも重要だ。「通常レベルのストレスにさらされているときに継続的に物忘れすることに気付いた場合は、医師に相談すべきだ」という。 　同博士はまた、なるべくマルチ・タスキング（複数の仕事を同時に抱えること）をしないようにすべきだと述べる。「同時に10個のことをしていると、それぞれのタスクに脳の10分の1しか使っていないことになる。それでは最高の水準で物事をこなすことが難しくなる」と同博士は指摘、「それがストレスレベルを上げる恐れがあり」、結果として鍵を置いた場所を思い出せないことになり得ると話した。